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物流コラム

トラック新法とは?物流業界への影響と背景をわかりやすく解説

トラック新法が2025年6月に公布され、物流業界には大きな影響が及んでいます。運送業者はもちろん、荷主企業も対応が必要になることから、注意が必要です。

今回は、トラック新法の概要から成立の背景、トラック新法の変更のポイントやトラック新法の物流業界への影響まで解説します。

トラック新法とは?

まずはトラック新法の概要を解説します。

トラック新法とは?

トラック新法とは、2025年6月に成立した「貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律」と「貨物自動車運送事業の適正化のための体制の整備等の推進に関する法律」のことを指します。この2つの法律は一体的に運用されていることから、ひとくくりにされています。

物流業界を取りまくドライバー不足や長時間労働、業界の多重下請け構造などの問題を受け、トラック運送事業を健全に運営するために諸制度の見直しが図られました。

トラック新法の主な変更点

トラック新法では、既存制度においてさまざまな変更点があります。例えば一般貨物自動車運送事業の許可について、従来は有効期限がなかったところ、5年ごとの更新制になりました。

また許可のない自家用トラックである白ナンバーによる有償輸送行為を違法とする白トラ対策強化や、多重下請け構造の是正、適正原価を下回る運賃での契約の禁止、ドライバーの処遇改善の法的義務などが主な変更点です。

このように、トラック新法では、物流業界全体に影響のある改正が数多くあります。

トラック新法の背景

トラック新法が成立した背景にはどのようなことがあるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

働き方改革関連法の適用による「物流2024年問題」

近年、働き方改革関連法において長時間労働の是正が行われていますが、2024年4月にドライバー業務にも適用されました。これにより、ドライバーの稼働時間が減ったことで、人手不足や配送遅延などの諸問題が「物流2024年問題」として問題視されました。その結果、物流業界はさまざまな課題に直面することになりました。

特に問題となったのが、運送会社が一日に運べる量が減少し、収益が低迷することです。時間外労働における割増賃金率が月60時間を超える場合に25%から50%へ引き上げられたことから、人件費についても負担が増しています。こうした状況はコスト増しと輸送能力の低下など深刻な問題となっています。

その他にも、低運賃や多重下請け構造、白トラによる違法運送などの問題もあります。

これらの状況は持続可能な物流が危ぶまれることから、国は制度改正に踏み切りました。

トラック新法で何が変わる?内容に関するポイント

先ほどトラック新法の主な変更点をご紹介しましたが、より詳しくご紹介します。

5年ごとの許可更新制度の導入

普通トラックを使用して荷主の荷物を運ぶ事業を行う際に必要な一般貨物自動車運送事業は、従来、有効期限はありませんでした。しかしトラック新法においては5年ごとの更新制度が導入されました。5年ごとに安全管理体制や法令遵守の状況に関する審査を受ける必要があり、基準を満たしていなければ更新できません。今後は安全管理の継続など健全な運用が求められます。

白トラ規制強化

従来は、白ナンバーの自家用トラックによる運送が問題視されていましたが、取り締まりがむずかしいこともあり、適切な指導が十分に行き届いていませんでした。
そこでトラック新法においては白ナンバートラックの規制を強化しました。違法行為として明確に位置付けることで、抑止効果を高めるねらいがあります。

多重下請け構造是正のための再委託回数制限

荷主から荷物の運送の委託を受けた後、運送会社が下請け企業に運送を委託することが一般的に行われてきました。しかし下請けが多重化し、運賃の中抜きが発生し、末端の運送会社が苦しむ構造が横行していました。この問題を受け、今回の改正では、再委託の回数が制限され、原則「二次下請け」までにとどめるよう努力義務を課すこととなりました。

適正原価を下回る運賃禁止

荷主企業が運送会社に支払う運賃については、従来、過度な値下げ競争が進んでいることで問題視されていました。そこでトラック新法では、国が定める適正原価に基づいた最低運賃を下回る契約が禁止されることになりました。今後適正原価を下回る運賃・料金の制限が導入されます。

ドライバー処遇改善義務化

ドライバーの低賃金や長時間労働などが問題視されていることを受け、運送会社はドライバーの処遇改善を行うことが義務化されました。従来は努力義務だったため、規制が強化された形になります。処遇改善が適切になされているかどうかは、許可更新時の審査項目にも組み込まれる見込みがあり、真摯に対応する必要が出てきています。

トラック新法の物流業界への影響

トラック新法を受け、物流業界にはどのような影響が及んでいるのでしょうか。運送会社、荷主企業、物流業界全体それぞれ見ていきましょう。

運送会社

・安全管理やドライバーの待遇改善、人材確保などへの対応が急務
5年ごとの許可更新制度が導入されたことを受け、運送会社は従来よりも安全管理や法令遵守に力を入れる必要があります。特に義務化されたドライバーの処遇改善については、従来と異なり、事業継続に関わることから決して手を抜くことができません。

・適正な運賃の維持が可能
適正原価を下回る運賃が禁止されることを受け、これまで荷主企業からの価格交渉の圧力に悩まされていた場合、交渉力を得やすくなるでしょう。その結果、適正な運賃の維持が可能になります。

・事務負担や管理業務の強化
多重下請け構造が是正されたと同時に、実運送体制管理簿の義務化により透明性を確保する必要性が生まれています。そのため、事務負担が増すことが考えられます。

荷主企業

・契約車両が白トラだった場合の責任が荷主側にも及ぶ
白トラ規制強化は健全な物流を実現することから喜ばしい一方で、荷主企業の責任が生じています。万が一、白トラを使用する違法な運送会社へ委託してしまった場合も、取引の責任が荷主企業にも及ぶことが明文化されました。正規の運送事業者であるかどうか、許可証や車両情報の確認など自ら積極的に行う必要が生まれています。

・運賃増加への対応
適正原価を下回る運賃での取引は禁止になることで、荷主企業にとっては従来よりも運賃が増す可能性があります。物流コストが上がることへの対応策を行う必要があるでしょう。

物流業界全体

・業界再編が進む可能性
5年ごとの許可更新制度や違法行為の規制などを受け、従来と比べて、優良な運送会社が増加する可能性があります。多重下請け制限も考慮したうえで荷主企業も適正な運送会社の選定が求められることもあり、物流業界全体の再編が進む可能性があるといわれています。

まとめ

トラック新法の公布を受け、物流業界全体とさまざまな企業へ影響が及んでいます。変更点を正しく把握して、何をすべきなのかを見極めることが先決です。

そのトラック新法の対応策の一つとして、荷主事業者は、物流最適化のために、物流手法や業務フロー改善を進める必要があります。

そうした中、トラック輸送を船舶や鉄道に切り替えるモーダルシフトが一つの対応策となります。モーダルシフトのうち、船舶利用については、なじみがなく、不明点も多いのではないでしょうか。そのメリットを知ることで、有効な対応策であることがおわかりいただけるかと思います。

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