物流BCPとは?
BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)とは、企業が緊急事態に遭遇した場合に事業資産の損害を最小限にとどめ、重要な事業の継続と早期復旧を可能とするための計画です。その中でも「物流BCP」は、社会活動に大きなマイナスを生む災害発生時に「物流を止めない」「サプライチェーンを早期復旧させる」ことに特化した取り組みを指します。東日本大震災での広域な物資不足の教訓や、災害大国・日本において、その重要性は年々高まっています。
物流BCP策定の目的
物流BCPを策定する最大の目的は、従業員の安全確保を大前提としつつ、物流機能を担保して最短期間で事業を通常運用に戻すことです。有事においても顧客への供給責任を果たすことは、企業の社会的信用やブランド価値を守ることに直結します。また、国土交通省のガイドラインでも推奨されている通り、有事に備えて荷主企業と物流事業者が平常時から連携体制を構築することは、双方の競争優位性向上にも繋がります。
国土交通省発表の物流BCP策定ガイドラインでは、下記の策定が推奨されています。
①防災対策(事前の体制整備)
人材確保や体制構築、物流拠点の震災対策や燃料等確保、災害発生時の行動マニュアル作成が推奨されています。
また、代替輸送ルートの確保についても言及されており、トラックによる長距離陸路輸送が使用できない場合の鉄道輸送や海上輸送についても示唆されております。
②発災後の措置
まずは従業員の人的被害の把握、その後物流事業者との連絡機能の確保です。災害時には平時の連絡インフラのダウンが起こりうるため、非常用通信設備をいくつか用意し、速やかな相互連絡体制の確保が重要であると解説されています。
③復旧対策の実行
現状に応じた復旧対策の実行、燃料の確保などを行います。特に災害発生後は通常の輸送に加え、国や自治体、メーカーからの支援物資輸送の要請が発生するため、どの範囲まで対応するか等も考慮した上で配車・人員配置を行うよう指示されています。ただし従業員、特にドライバーの安全確保を最優先とし、配送先での被災や過労には十分配慮を行うよう留意しましょう。
④実効性強化のための仕組みづくり
各荷主と物流事業者間で定期的にBCP対策会議を実施し連携体制を構築すること、共同訓練の実施についても推奨されています。
参考情報:国土交通省「荷主と物流事業者が連携したBCP策定のためのガイドライン」
物流業界のBCP対策の現状
物流の各プロセスにおけるBCP対策が重要であることは広く認識されています。しかしながら物流BCPの策定には、コストや労力などの負担を要するため、なかなか普及が進まない状況です。日本物流団体連合会によるBCP策定状況アンケートでは、策定済は45%程度にとどまり、いつ起こるか分からない災害対策としては十分に普及していると言い難い状況です。
今日から始める、物流BCP策定
自然災害による交通インフラの寸断や規制の影響を受ける物流業界においては、先ほどの国交省の物流BCP策定ガイドラインでも「荷主と物流事業者の協力体制の構築」「平時から代替手段について検討を進める」ことが推奨されていますが、まずは非常時マニュアルを作るところからスタートするだけでもご検討ください。
・物流BCP担当者確保
物流事業者と荷主の連携が重要になるため、サプライチェーン全体に精通した担当者を選定します。
担当者を中心にマニュアルの策定や体制整備、研修実施などを進めていきます。
・行動マニュアルの策定
災害発生時に参集できた従業員が、まず何から行うべきかをまとめたマニュアルを策定し、定期的に見直しやそれに基づいた研修・防災訓練を実施します。
特に中小事業者においては最初からBCP策定プロジェクトを立ち上げるのは難しいため、行動マニュアルを作成し、それを充実させBCPに発展させていくことも望ましい方法です。
・物流拠点の分散
先述の通り、物流拠点を1か所や近郊に集中させると平時の運用効率は上がる一方、その拠点や地域が被災した際物流網が停止するリスクがあります。可能であれば同時に被災しにくい別地域、それも難しい場合は使用する主要幹線道路やルートが重複しない地域に物流拠点の分散を行いましょう。
ただし物流拠点の分散は運営コストに大きく影響するため、必要であれば外部委託や運用代行などのサービスを利用するのも一つの手段です。
・輸送手段の多様化
特に長距離の輸送手段がトラックによる陸送だけの場合、大震災で道路が破損した際に輸送が停止する可能性があります。迂回路も他の車両が集中し渋滞が発生する可能性や、緊急車両通行のための交通制限が敷かれる場合もあります。
可能であれば鉄道輸送や航空輸送、海上輸送など別の長距離輸送手段を確保しておく必要があります。これらの輸送事業者との災害時連携強化のために、平時からある程度シフトしておくのも有効です。
ただし、鉄道輸送は災害発生時にレールが破損する可能性もあり、航空輸送は自衛隊や他国からの救援を受け入れる拠点としても機能するため、民間航空機の運航に影響が出ることも想定されます。
海上輸送は比較的災害発生時の運航にも強く、特にフェリー輸送はガソリン満タンの車両ごと物資も輸送でき、物資運搬をより効率的に行うことができます。