ドライバー不足時代の物流最適化とは?モーダルシフト成功のポイントを解説

近年、物流業界ではドライバー不足が高じており、物流最適化が求められています。さまざまな問題が生じる中で、どのような解決策が考えられるでしょうか。
今回は、深刻化するドライバー不足の現状と物流業界への影響、そしてその原因と解決策を掘り下げます。さらに、有効な解決策の一つとしてのフェリー輸送の可能性についても詳しくご紹介します。
ドライバー不足が深刻化する物流業界
物流業界では、昨今、ドライバー不足が深刻化しています。
ドライバー不足の現状
国土交通省等が示しているデータ(※1)によると、近年、トラックドライバーが不足していると感じている企業の割合は50%を超えており、増加傾向があります。
また、国土交通省のデータ(※2)によれば、トラックドライバーの有効求人倍率は、全職業平均より約2倍高いこともわかっています。2023年は全職業で1.17倍である中、貨物自動車運転手は2.18倍となりました。人手不足が深刻化していることが見て取れます。
さらに、国土交通省のデータ(※3)では、トラックドライバーを全産業と比較すると年間労働時間は約2割長く、年間所得額は約1割低いことがわかっています。
ドライバー不足による物流業界への影響
こうしたドライバー不足は今後も続くことが懸念されていますが、それによって物流業界へ深刻な影響をもたらすことが予想されています。
国土交通省のデータ(※3)では、従来運送できていた荷物のうち、2024年度には約14%(4億トン相当)、2030年度には約34%(9億トン相当)が運べなくなる可能性があると試算されています。
※1 出典:経済産業省・国土交通省・農林水産省「我が国の物流を取り巻く現状と取組状況」
※2 出典:国土交通省「物流を取り巻く動向と物流施策の現状・課題」
※3 出典:国土交通省「検討の背景②物流を取り巻く現状と課題」
ドライバー不足の原因
物流業界において、ドライバー不足が深刻化している原因は一つではありません。次のようなさまざまな原因が絡み合って生じています。
労働時間が長い上に低賃金
ドライバーの長時間労働は長年大きな問題となっていました。2024年4月に時間外労働の上限規制が適用され、是正されています。一方で、低賃金であることはいまだに問題視されており、「労働時間が長い上に低賃金」な職種として魅力が薄い点がドライバーを志望する人が少ない原因の一つとなっています。
交通事故のリスク
ドライバーは交通事故のリスクと常に隣り合わせで業務を行う必要がある点もドライバーという職種の人気を押し下げています。事故削減のために、国土交通省は「事業用自動車総合安全プラン2025」を推進し、重傷者数や事故削減目標を掲げて取り組んでいます。
若年層のドライバー離れ・高齢化
総務省の「労働力調査」において、ドライバーについては40~54歳が45.2%である一方、若年層の15~29歳は10.1%となっており、高齢化が進んでいます。同時に若年層のドライバー離れも深刻化しています。その理由としては、そもそも「車を運転しない=車離れ」をはじめ、先述のような「労働時間が長い上に低賃金」といった労働条件が低い点が原因の一つと考えられています。
EC物流量の増加
ドライバーの人数が減っているだけでなく、物流量が増えている点も、ドライバー不足状況が深刻化している原因の一つです。コロナ禍で一気に加速したECの活性化を受け、EC物流量の増加していることが主な背景となっています。
女性進出の遅れ
近年、国内では広く女性活躍が促進されていますが、ドライバーについては女性進出そのものが他業界よりも遅れています。背景として、長時間労働や重量物の取り扱いなど身体的な負担が大きいこと、勤務先での更衣室や化粧室の不備など労働環境が女性に適していない点が挙げられます。
ドライバー不足の解決策
では、ドライバー不足の課題はどのように解決できるのでしょうか。主な解決策をご紹介します。
積載率向上・業務効率化
物流量に対してドライバー数が足りていないといった状況を受け、少ないトラック車両でより業務を効率化しながら運ぶ必要性が生まれています。そのため、積載率を向上させることが一つに考えられます。
積載率向上の具体的な方法としては、荷主企業による配送日や時間の条件緩和、梱包やサイズの見直しによる空間最大利用、車輌の大型化などが考えられます。
処遇・労働条件の改善
ドライバーの長時間労働を削減し、賃金を適正なものとするほか、労働環境を改善する取り組みは、ドライバーという職種への志望者増加につながります。
女性が働きやすい環境整備
女性進出を促進させるためには、ドライバーという職種の魅力をPRする前に、まずは労働条件や環境を見直す必要があるでしょう。長時間労働をなくす、職場の更衣室や化粧室を整備するなどのほか、出産・育児などのライフステージに応じた育児休業制度の整備なども有効です。
共同配送・中継輸送
物流形態を見直すことは、ドライバー不足の有効な対策となります。特に共同配送や中継輸送は有望です。共同配送とは、複数の荷主が、それぞれの荷物を同じ車両で同じ配送先へ運ぶ手法であり、車両とドライバーの人数を削減することができます。
中継輸送とは、複数のドライバーがリレー式に荷物を運送する手法です。一人一人のドライバーの労働時間や負担が減ることで、労働環境の改善効果が期待できます。
モーダルシフト
モーダルシフトとは、トラック等の自動車で行われている貨物輸送を鉄道や船舶の利用へと転換することを指します。モーダルシフトでは、トラックは鉄道や船舶を利用する拠点までの運送で済むため、労働時間と業務負荷を低減し、ドライバー不足への解決策となり得ます。船舶利用のうち、フェリー輸送の詳細やメリットについては後述します。
【関連リンク】
モーダルシフトとは?メリットと解決できる課題
個人配送事業者の利用
近年は、配送マッチングサービスなどを利用して、軽貨物運送業の届け出を行っている個人事業主に配送を委託する動きも出てきています。特に繁忙期など、一時的にドライバー不足が深刻化するタイミングに向いています。
有効な解決策としての「フェリー輸送」
ドライバー不足の解決策の一つとして取り上げたモーダルシフトのうち、船舶輸送は有効です。その中でも、特にフェリー輸送は多くのメリットを持つ有効な手法です。
フェリー輸送とは?
フェリー輸送とは、荷主から預かった貨物をトラックやトレーラーで港まで輸送した後、フェリーに船積みして輸送する方式です。船積みの際には、トラックやトレーラーごと積むのが特徴です。フェリー輸送では、ドライバーは荷物を預かった拠点から港までの区間と、海上輸送した後、目的地に近い港から目的地までの区間にのみ稼働します。
フェリー輸送がドライバー不足への解決策となる理由
フェリー輸送は、特にドライバー不足への解決策となります。その理由としては、次の2点が挙げられます。
・海上部分において無人航送が可能なため、陸送トラックに比べ人員を大幅削減可能
先述の通り、トレーラーによるフェリー輸送ではドライバーは一部の区間のみの稼働となり、海上部分が無人航送となります。その結果、陸送トラックに比べて人員を大幅に削減できます。
・乗船時間は休息期間となる
ドライバーがトラックごとフェリーに乗船することもありますが、8時間以上乗船する場合、その乗船時間は休息期間として取り扱いができる特例を適用できます。
フェリー輸送のメリット
その他にも、フェリー輸送は次のようなメリットがあります。
・物流コスト抑制
陸送による燃料費削減やドライバーの拘束時間の削減による人件費削減などにより、物流コストを抑制できます。
・CO2排出量削減
国土交通省によると、1トンの貨物を1km運ぶときに排出されるCO2の量を比較すると、トラックが207gであるのに対して、船舶は42gと約5分の1となります。船舶輸送を推進することで、CO2排出量の削減が実現するため、環境配慮の取り組みにつながります。
まとめ
ドライバー不足が高じている物流業界では、それによってさまざまな課題が生じており、早急に解決策を進める必要があります。
その対応策の一つがモーダルシフトです。ご紹介したように、フェリー輸送は人員削減や休息期間の特例の利用などが可能です。また物流コストを抑制しながら、環境に配慮した輸送を実現できるというメリットも得られます。
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